Mirai Translate TECH BLOG

株式会社みらい翻訳のテックブログ

DX Criteriaで始める開発チーム改善の取り組み(2)〜心理的安全性を改善したい〜

こんにちは。プラットフォーム開発部 EMのchikaです。

前回、私たちのチームで行っているDX Criteriaの活用方法についてお話ししました。

miraitranslate-tech.hatenablog.jp

今回はその中のディスカッションにて話題に上がった、心理的安全性の改善に関わる取り組みについてご紹介します。

前回お話ししたこと

前回のおさらいとして、DX Criteriaを使った取り組みの流れに簡単に触れておきます。

1. 四半期ごとに各チームでDX Criteriaのアセスメントを実施 *1

2. アセスメント結果を集約し、スコアの高低や推移などを可視化する

3. 各チームからメンバーを集めて結果をもとにディスカッションする

4. ディスカッションで改善したい項目を決めて取り組む

ディスカッションで話題に上がった「心理的安全性」の違和感

半年ほど前のディスカッションで、心理的安全性(TEAM-3)が他のカテゴリと比較してもトップクラスに平均スコアが高いという傾向が出ていたのに、参加者みんながあまり腑に落ちない表情をしていました。

聞いてみると、「実感と合っていない」「スコアは高いけど課題感はある」という感触でした。

その場で話したことに加えて、後日現場で他のメンバーにもヒアリングしてみたところ、こんな声が上がりました。

  • 普段そんなに雑談などできていない
  • リーダー(ファシリテーター)ばかり話していると思うことがある
  • チーム人数が多いので会議で発言しにくい
  • 「なんでも聞いてください」「いつでも相談してください」と言うものの相談しに行くのにハードルを感じる

これらの意見をふまえて、チーム内、チーム間 の2つに分けてコミュニケーションの課題として整理しました。

抽出したコミュニケーションの課題

チーム内

  • 業務に必要なコミュニケーションは適宜取れているが、チームによっては雑談などが気軽にできる関係性までは築けていない
  • 人数が多いチームではコミュニケーションが少ない

チーム間

  • あまりコミュニケーションが取れておらず何でも気軽に相談しにいける関係性ができていない
  • 「いつでも相談して」と言いつつ実際はあまり頼まれたくないこともある
    • (それが分かっているからなおさら相談しに行きにくいんですよね...)

心理的安全性に関するアンケートを実施

課題整理はしましたが、全員の意見を聞いたわけではないですし、定量的に可視化する必要もあります。 そこで、まずは現状を把握するためにアンケートを実施することにしました。

心理的安全性の概念を提唱したエイミー・エドモンソン教授による 心理的安全性を測定するための7つの質問を参考にアンケートを作り、

  • case1:自チームのメンバーのコミュニケーション
  • case2:他チームのメンバーとのコミュニケーション

の2つのケースを想定して各チームのメンバーに回答してもらいました。

アンケート内容

設問

あなたが、自チーム/他チームのメンバーとコミュニケーションを取る時のことについて伺います

  1. メンバーに話しかけづらい
  2. 無知だと思われるのではないかと不安になる
  3. 仕事ができない無能な人だと思われるのではないかと不安になる
  4. 邪魔をしていると思われるのではないかと不安になる
  5. 誤りを指摘すると否定的に捉えられるのではないかと不安になる
  6. 声を掛けられた時、仕事の邪魔だなと思うことがある。

回答方法

case1(自チーム)、case2(他チーム)それぞれについて以下4つから選択

  • いつもそうだ
  • 時々ある
  • あまりない
  • 全くない

アンケート結果

結果は、case1,2ともに 設問 1, 4, 5 において 「いつもそうだ」「時々ある」と感じるメンバが一定数いることが確認でき、自チームの中さえもメンバー同士のコミュニケーションに遠慮が見えることが分かりました。

またcase1と比べるとcase2の方がネガティブな評価が多く、

  • 「他チームのメンバーには話しかけにくい」
  • 「(話しかけたら)邪魔に思われるのではと不安になる」

といった心理的な傾向を確認することができました。

アンケート結果の考察

「話しかけにくい」空気の背景

「話しかけにくい」ということは、気軽に話せるような関係性があまりできていないことの表れですが、その背景は何でしょうか。

要因は1つではないと思いますが、私たちがほぼフルリモートワークで働いているということは大きな要因になっていると思います。

ここで私たちの働き方について状況を説明しておきます。

みらい翻訳ではコロナ前から国内の複数拠点でリモートワークをしていたこともあり、現在もほぼフルリモートで働いております。

リモートワークのコミュニケーションにも慣れたもので、Slack「今ちょっと話してよいですか?」などと一声かけてハドルをしたり、zoomでミーティングするなどもカジュアルに行われています。 さらにバーチャルオフィス(ovice)も導入しており、よりコミュニケーションをとりやすい環境もあるので、リモートワークそのものに不安を感じているメンバーは少ない状況(むしろリモート最高!と思ってるメンバー多数)です。

え、話しかけにくいどころか全然話しやすそうじゃんって?

はい、実際リモートワーク自体はかなり機能していると思います。

リモートワークで必要なことしか話さなくなっている

ただ、いくら慣れたとしても、それでオフィスワーク時と同等のコミュニケーションができているかというとそういうわけではありません。

先にあげたツールでオンデマンドで話をすることはできるようになっていますが、それは裏を返せば必要がある時にだけ話しているとも言えます。「最近仕事の話しかしていない」という意見も時々耳にします。

oviceで雑談を時々交えながら仕事をするメンバーもいますが、作業に集中したいので雑談はあまりしたくないと思うメンバーもいます。というか、程度の差はあるものの、誰でもそう思うタイミングはあります。

おそらく、オフィスと違って休憩スペースに移動しているわけではなく机に向かっているので少々切り替えが難しいということがあるのではと推測しています。

オフィスに居るときも、席に座ったまま雑談をすることはそれほど多くないのではないでしょうか。

こうして、意識的に機会を作り出さない限り、リモートワークでは雑談機会が減っていきます。

他チームのメンバーとの接点は本当に少ない

同じチーム内のメンバーは朝会など日常的に話す機会があるので仕事以外の話をするきっかけも作りやすいですが、他チームのメンバーとはミーティング機会も少ないのでそうはいきません。

オフィスに居る時はミーティング前後のちょっとした時間やランチ、休憩スペースや喫煙所などで仕事の関わりがなくても他チームの人と話す機会は作りやすかったのですが、リモートワークではミーティング前後の時間の余裕がない、ランチや休憩時は基本オフライン状態になるなどで、他チームの人と話す機会は圧倒的に少なくなります。

そうなると、特にジョインして日が浅いメンバーにとっては、他チームのメンバーは「仕事で用がない限り話すこともない」ので、まともに話をしたことがない(中には顔もよく分からない)人たちばかりになってしまいます。

そして、そのよく分からない相手に対して何か依頼・相談するには多少の勇気が必要です。 その人の性格を知らず関係性もできていない状態だと、例えば簡潔で短いメッセージを書く人に対して「なんかコワイ」「マズいこと言ったかな?」などと感じやすくなり心理的な障壁ができ、ますます話しかけにくくなります。

2019〜2020年に行われたMicrosoft社の調査で、「リモートワークによって正規のビジネスグループ(部署、チーム)と非公式のコミュニティ(他チーム、他部署の人との直接的な仕事以外の関係性)が相互の繋がりを失い、サイロ化が進んでいることが分かった」と発表していますが、まさにそのような傾向が顕著に現れ、関係性を構築するのが非常に難しくなっているといえます。

www.microsoft.com

(参考) Microsoft、リモートワークの影響を約6万人の従業員で調査した研究論文発表 - ITmedia NEWS

改善に寄与した取り組み

心理的安全性について何らか改善したいよね、という思いはディスカッションしたみんなが感じていたので、それぞれできることを少しずつ行いました。

この直近四半期〜半年で行ったことをいくつかご紹介します。

これらは全てアンケート結果を受けて行った施策というわけではありませんが、改善に寄与したと思われるものをふりかえりとして取り上げてみます。

人数が多いチームの分割

プロダクト開発チームでは、一時期15人近いエンジニアで1チームを形成していました。

これは、2チームに分かれていたときの協業が思うようにうまく行かなかったことから「一度1チームに統合してやってみよう」というチャレンジの結果だったのですが、3ヶ月ほど経って振り返った結果、チーム内コミュニケーション課題が生まれたという経緯がありました。

そこで、チームメンバーとPOで相談した結果、開発が一区切りつくタイミングでチームを4つに分割し、それぞれ3,4人で形成される少数チームに編成し直すことになりました。

分割後は、改めてチームビルディングをし直したり、4チームの業務の境界を調整したりと 立ち上がりの苦労はありましたが、1チームのときには会議でほとんど発言が出ずに停滞していたコミュニケーションが活発になるのが見て取れるようになりました。

メンバーの交換留学

チーム間のコミュニケーション自体は何かしらの手段にてできているけど、お互いのチームミッションが違うので、相手の事情を理解しきれず話が噛み合わない、というケースがありました。

こういうとき、交換留学的にメンバーを入れ替えたりすると両方のチーム事情の理解に役立ちます。今回は交換ではなく一方向ですが、1名がチームを移ることになりました。

配置換えをしたメンバーは、今まで見えてこなかった相手チームの状況が当事者として痛いほど分かるようになったようで、両チームの橋渡し役になってくれています。

チーム間の情報共有会

他チームのメンバーに話しかけにくいのはお互い何をやっているか状況が分からないから、という理由から、連携する必要があるチーム間において定期的に情報共有のミーティングを開いて、そこで困りごとなどもお互いに話し合うという動きも見られました。

何のひねりもない当たり前のことに見えるかもしれませんが、ここで困りごとをこまめに共有することで、相談のタイミングが遅くなってしまい塩対応になってしまう、それによりチーム間の関係が悪くなってしまうという問題を回避することができるという意味では、ここであえて取り上げる意義もあるかと思います。

オフラインでのふりかえり、懇親会

私たちの部には遠隔地での在宅勤務をするメンバーが半分ほど居て、普段はフルリモートが基本なので、お互いに直接顔を合わせたことのない人もそれなりにいます。

リモートで顔を見ることができていても、直接会って話した経験の有無によって心理的距離はかなり違うので、できればたまには(少なくとも1回は)顔を合わせたいものです。

そこで、3月に行う期末のチームのふりかえりを、それぞれ予定を調整の上、できるだけ渋谷本社でオフライン開催してもらうように呼びかけました。

結果的に部内の7割ほどのメンバーが同日に集まることができ、オフラインでのふりかえり議論や、その後の懇親会で親交を深めることができました。

oviceでの簡単なルール

oviceでは話したい人のアイコンの近くに行って発話すれば話しかけられるので、zoomなどでビデオ通話する際の以下のようなプロトコルが不要になります。

Slackで相手の状況も分からず「今ちょっと良いですか」とテキストで聞いて

良いと反応をもらってから

ハドルやzoomでミーティング開始

これにより音声会話を始めるまでのハードルがかなり下がりますが、オフィスで顔が見えているときよりと比べると「話しかけて大丈夫かな」「邪魔にならないかな」などの遠慮を感じてしまうことが正直あります。

実際に話しかけに行ったらそこで打合せをしていたので「ミーティング中なので後で」となったケースもあり、「邪魔をしてしまった」体験が気軽に話しかけにくくする一因になりえます。

そこで、あるチームでは以下のようなことを決めて他のチームにも伝えました。

「話しかけるのは後にして欲しいような会議をするときはちゃんとovice上に設置した会議室に入って話をする。それ以外であればいつでも話しかけてOK」

たったこれだけですが、相手のステータスが分かるようになったというだけで心理的ハードルが下がります。要は顔が見えない状態で「話しかけてOK」の雰囲気をいかに作るのかが大事なのですよね。

やってみた結果、改善されたのか?

ここまでで書いた取り組みの甲斐あってか、直近2023年3月に再度心理的安全性に関するアンケートの結果では、ポジティブな回答の比率が上がり、「他チームの人に話しかけにくい」という状況は大きく改善されました。

ただし、コミュニケーションの良し悪しは時間とともに変わっていくので、定期的に状況を見ていこうと思います。

さいごに

今回は、DX Criteriaの話から派生した心理的安全性の改善の取り組みについて紹介してきました。

皆様の現場ではどのように心理的安全性を確保されているでしょうか。 IT業界はリモートワークを前提とした現場も多いと思いますので、取り組み事例があればぜひ知りたいです。

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*1:テーマは「チーム」「システム」の2つ