Mirai Translate TECH BLOG

株式会社みらい翻訳のテックブログ

社D、はじめました。

こんにちは。プロダクトマネジメント室の八木(X: @TehTalikAis)です。社内ではChuaと呼ばれています。

社内ではデータサイエンティストとしてマーケティングとプロダクト開発に関わるデータ分析をしている傍ら、今年(2024)4月から京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科(以降、ASAFASと呼びます)東南アジア地域研究専攻の博士課程(岡本ゼミ)に所属しております。

当該研究科では東南アジア政治の定量的・定性的な研究をしています。

主に平日はフルタイムで働きながら、業後および休日に研究をしているのでいわゆる社会人博士(以降、社Dと呼びます)をしている状態です。

社Dの中でもどちらかというと人文社会科学系の分野を研究しています。主観ですが社Dと言えば自然科学系の人が多いのかなと思います。

そのため、私の経験は比較的珍しいものかなと思います。こうしたところから人文社会科学系の社Dとしての経験を共有してみようと思いました。

理由は主に二つあります。一つは「社D楽しいよ」ということをお伝えするためです。もう一つ、そして最も力点を置いているものですが、「人文科学系の人もストレートにアカデミアに進学しなくても良いんじゃない?」ということをお伝えしたかったためです。これは従来の「学卒、修士修了、そして博士進学」という道を否定するものではありません。しかし私自身が直面した問題として博士に進学したいと言った時に受けた家族の反対であったり、アカデミアにおけるポスト不足に関する不安がありました。こうした状況で、もっとカジュアルに、でも真剣に人文社会科学系の研究をしたいそんな人に向けて筆を取りました。

 

理由: 博士課程になぜ進みたいと思ったのか

修士の頃

私はもともと修士から博士一貫課程制度を取っている研究科(ASAFAS)に在籍していました。当時から今にかけて一貫して東南アジアの島嶼部はマレーシア、特に半島部マレーシアを研究対象としてきました。もともとは文化人類学や哲学、政治学の定性的な議論に関心を抱いていました。『想像の共同体』で脳天に衝撃を受け、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』で感動し、岩波文庫白の『宗教生活の原初形態』を読んで「何もわからん」、「デュルケームを読むことより難しいことってあるん?」などと友人と語ってた一般的な文系大学院生でした。

ASAFASではフィールドワークを中心に、研究対象地域で得たデータをもとにして何かしらの論考(いわゆる修論ASAFASでは博士予備論文と呼んでいます。以降予備論と呼びます)を書くことが院生にとっての主な活動となります。

私も例に漏れずマレーシアの首都はクアラルンプール近郊でいそいそとフィールドワークをし、無事大量のデータを入手して、万全の体制で臨んだゼミで惨敗しました。

「八木さんって統計データのとの字もわからないんですか」から始まった激詰によって半べそかきながら鴨川横を氷結片手にやけ酒しながら歩いてました。トラウマです。

そのまま丸善統計学コーナーに行き、「統計ってなんやねん」と言いながら『Rによるやさしい統計学』を買いました(これが後にデータサイエンティストとして働く伏線でした)Rでデータを動かしたり統計解析の真似っこをしているうちにどんどん統計沼にはまり込み、水が合ったのか研究がとても楽しいと思えるようになりました。

 

博士進学への迷いと決心

そのまま計量政治学的なアプローチで予備論を書いていったのですが、この時期私は修士修了後の進路で大きく悩みました。家族全員に反対されたり、ポストがないのではという不安で結局博士は諦めて就職することにしました。いわゆる一般的な新卒での就活をして、メーカーに入社を決めました。

無事予備論を提出して公聴会に臨むことになりました。今までの合同ゼミなどで舞妓はんひぃ~ひぃ~並のピリリとしたコメントを賜った先生方から「頑張ってね、きっと上手くいくよ」と言われた時に「博士行っとけばよかったかなあ...」と思い始めました。幽遊白書の有名なOP曲『微笑みの爆弾』にもありますよね、「メチャメチャきびしい人達がふいに見せたやさしさのせいだったりするんだろうね」。「ア・リ・ガ・ト・ウ・ゴ・ザ・イ・ます!」

無事に深手を負った公聴会も過ぎ、修了が決まった後の追いコンの帰りに敬愛してやまない指導教官に「僕は八木さんの博論読んでみたかったけどね」と言っていただいた(はず)後、それが脳裏で反響し、京都駅発の新快速で号泣してたら気づいたら明石駅にいました。何が言いたいかというと、マレーシア政治それ自体への関心もあったのですが義理人情の割り切れない思いから私はいつか絶対ASAFASに戻ると終電も過ぎた明石駅で誓ったのです。これが博士進学を決めた理由でした。

 

社Dに向けて

その後、新卒入社したての社会人の洗礼を浴び、博士進学を考える余裕もないままに数年が経ち、紆余曲折あってみらい翻訳にデータサイエンティストとして拾っていただいた時に初めて「仕事っておもろいんや...」と思ったり、上司や先輩方、同僚など良き人々に囲まれて仕事を進めていく中でデータ分析をもっと勉強したいと思い、1~2年ほど時系列解析やベイズ統計、因果推論などの習得と業務への反映に没頭していました。そうして人の心を取り戻す中で「せや!博士したいんやった!」ということを思い出し、入社してから1年半くらいの頃から徐々に1on1などで「社Dしたいんですけど...」と打ち明けるようになりました。良き職場のご理解もいただけて、背中を押していただけました。その後ASAFASの指導教官や教務掛に連絡を取り、諸々の手続きをして戻ることになりました。

出戻りではありますがもちろん入試ももう一度受けたりしました。その際には研究計画書などの作成や口頭試問の対策を進めてきました。データサイエンティストとして働いたり上で述べた分野の勉強をする中でも合間を見てマレーシア政治や人文社会科学系の文献を読み漁っており、査読付き論文も1本ですが書いてた(これは職場環境が素晴らしいのでできました...)のでこれらの準備においてブランクを感じることはなかったです。もし社Dを意識されている場合には合間合間に何か論文を書いてみたり最新の文献に触れたりするのが良いかもしれないですね。

 

入試

入試は対面で、主査1人、副査2人の先生方との口頭試問でした。研究計画について一通り話し、その上で研究テーマをもっと良いものにするにはどうすれば良いかなどディスカッションをしたりしました。少しピリリとする瞬間もありましたが「あ〜ASAFASだ〜」と懐かしい思いでつい笑みが溢れてしまいました。入試はなんとか合格し、入学が決まりました。

 

博士進学が決まってから: 仕事との両立

二月ごろには入学が決まっていたのですがその前後で共同研究を2つすることになりました。一つは指導教官と研究室の後輩(といってもすでに博士を取っている)とのもので、もう一つは先に博士を修了された先輩とのものです。この頃から、入学後である現在にかけて一日のスケジュールが大体固定化されてきました。

平日は大体朝7:30に業務を開始し、16:00あたりに業務を終了します。その後18:30ごろまで先行研究や各種文献を読んだりしています。その後夕飯をとって21:30、気分が乗ったら23:30ごろまでデータ分析などをしています。一日に6時間くらいは研究に費やせます。土曜日は大体朝7:30に近所の喫茶店で朝ごはんを食べながら文献を読んだりして9:00から12:00までデータ分析をしたりして、午後は14:00から18:30ごろまで、そして19:30から23:30ごろまで研究をしています。日曜日は朝9:00から12:00くらいまで研究をしてあとは半日休みにしています。理論上、「6時間×5日」(平日)+「13時間」(土曜日)+「3時間」(日曜日)=と週に46時間研究できます!Wonderful!...実際には体調を考えて詰め込み過ぎないように週30時間程度に抑えてます。

アカデミアのポストとかも特に気にしないで、自分の好きな研究を週に30時間もできるのですから非常に楽しいです(社D楽しいよ、という話)。そして、だからこそアカデミアの流行り廃りを気にせず自分の本当にやりたい研究に対して真剣に没頭することができていると思います(短期間で業績で出そう、かつ今Hotな話題が必ずしも自分の関心と合致するとは限らないので)。

現在私は関心のある話題に関して学内外で勉強会を3つ行うとともに、共同研究も3つ並行して行なっており、修士の頃よりも存分に研究を楽しめていると思います。

 

まとめに代えて

色々と書きましたが、重要だと思うことを最後にまとめていきたいと思います。

 

機会を逃さないために

まず、社Dをさせていただける環境に身を置くことが重要だと思います。前提として周囲の理解が得られる環境がないとそもそも進学が難しいと思います。そのためには、理解のある環境を求めるとともに、理解してもらえるように動く必要があると思います。私は2回転職をして偶然その機会に恵まれました。(会社に対して私自身の貢献度が高いと言うのはおこがましいですが)少なくともこの会社に貢献したいという気持ちは維持してきたつもりです。これはその機会を逃さないためにも重要だと思います。

 

社Dは一つの選択肢

次に、人文社会科学系でも(運や巡り合わせもありますが)社Dができる場合もあると言うことです。実家がはちゃめちゃに太くて理解があるというケースを除き、博士まで進学するということはその先の進路のことで迷うのは誰しもが通ることかと思います。その時に、社Dというのも一つの選択肢として持っていただくのもありなのかなと思います。社Dのメリットは進路の不安がなく、好きな研究ができるということです。一方でデメリットとしてはやはり仕事をしながらなので研究にだけ注力することはできないというものです。業務に支障をきたさないように体調管理などをしっかりとしないといけないですし、打ち合わせとゼミ・発表などがぶつからないように、仕事や論文の締め切りに間に合わせるために急ぎつつも焦らないように調整をし続けないといけないです。しかしそれでも「学卒、修士修了、博士進学」をストレートにしないとだめ、だから博士を諦めるという袋小路を脱することができるのかなと個人的には思います。進路のことよりも目の前の研究だ!と思えて、かつその環境に身を置いているのならストレートに進学するのもありだと思いますし、私のように石橋を叩いて渡るような人間でしたら一度働いて経済基盤を確保してから進学するということもできると思います。要するに選択肢が一個増えるということです。

 

社会人経験と研究

そして、個人的な見解ですが社会人経験は意外と研究の役に立つということです。私の分野に特有なことかもしれませんが、人文社会科学系のアカデミアのやり取りっていまだにメールで行われたり、ワードで文章を作って共有するといった割と非効率な手段がとられたりしているのを目にしてきました。そこにSlackを入れたりNotionで議事録取ったりと働いてると自然と身につくスキルが役立ったりしました。また、修士の頃はかなり引っ込み思案だったのですが他の人と一緒に仕事をするという経験を得て、共同研究とか勉強会とか割と気軽に始められるようになりました。また、データサイエンスを仕事にしているので研究においてもそれはかなり役立っています。

 

夢を追ってみよう

博士に行くか迷っている修士課程の方に向けて、社Dもぜひ検討して欲しいです。私の経験はあくまでもN=1であり、生存者バイアスがかかっている部分もあるかと思います。それでもチャンスを逃さないように努めること、諦めずにしぶとく機会を狙うことでそのような環境に巡り合うかもしれません。可能性を捨て去るよりも別の道から夢を追ってみるのも一つの選択肢だと思います。

最後に、従業員がこんなことを言うとめちゃくちゃ怪しい臭いがしてしまうのですが、博士進学という夢を夢で終わらせずに追い求めることに理解を示してくれて、背中を押してくれた現職には感謝の気持ちでいっぱいです。これからも仕事と学業を両立できるように励んでいきます。

 

We are hiring!

みらい翻訳では、私たちと一緒に機械翻訳のプロダクトづくりを進めていただけるエンジニアを募集しています! ご興味のある方は、ぜひ下記リンクよりご応募・お問い合わせをお待ちしております。