Mirai Translate TECH BLOG

株式会社みらい翻訳のテックブログ

「落穂拾い」を眺めながら

こんにちは。プラットフォーム開発部 QA チームの hark です。今回は、この夏読んだ本のうち、以下の2冊について紹介しようと思います。

この夏に読んだ本から

1冊目は、会議本です。
持ち回りで mtg のファシリを行う機会が定期的に発生していて、自分担当の場合は色々うまく回せていないなという反省もあり、手に取った本です。

 

もう1冊は、Kindle Unlimited で偶然目にした本ですが、いつ自分がその立場になってもおかしくないと常に恐怖を感じていることもあり、即読みました。

 

夏休み終盤の攻防

突然、話は変わりますが。

先月、8月24日(木) 夜から翌25日(金)にかけて、我が家では一つのトラブルが起きました。

 

(閑話)
コロナ期間を経て、小学校はタブレットを積極的に採用しており、タブレットを前提としたカリキュラムとなっています。

例えば、夏休みの宿題には、タブレット上で作成して、とか、タブレットで録画して、などを行った上で、締め切り日時までに所定のアプリで送信(提出)する、というパターンがありました。

時代は確実に変遷し続けているなぁと感じます。

 

締め切り日 前日の夜 [23:59:59 〜 ]

私の娘は小学校 4 年生でして、今回の夏休みの宿題に
「リコーダーで課題曲を吹いている様子をタブレットで録画して、提出する」
なるものがあり、その締め切りが、8月25日(金)の 20:00 でした。

このため、その前日である 8月24日(木)の 20:00 過ぎに
「仕方ないし、そろそろやるか」
と、リコーダーの練習を始めたのですが、
「シの♭の指がわからないんだけど」
というステータスでした。(参考: シ♭ - Google 検索

 

娘本人も私も非常に慌ててしまい、取り急ぎ、ネットで「シの♭の指」を調べたら、
ジャーマン式とバロック式のどっちの指を調べるんだとか、
ソプラノリコーダーとアルトリコーダーどっちで調べるのかとか、
知らんでもいいことまで調べて遠回りするなどして、
なんとか運指を特定できて、
吹いてはみたけど何か違うと言われて、
課題曲をリコーダーで演奏したものがないかネットで調べて、
一つ一つ聞かせては「なんか違う」「わからない」「うん、これ」とか言われて、
ようやくお手本に出来そうな音源を見つけて、
それを聴きながら、練習させてはみたのですが、
結構ボロボロで、
全部で 90 秒くらいの演奏なのですが、
すごくゆっくり吹いた場合でも、10 秒もせずにつっかえてしまって演奏終了となるような惨状でした。

 

絶望を感じたのか、ポロポロと泣き始めた娘を見て、
「今まで練習しなかったのだから、仕方ないよね。」
「(8 月に 2 週間ほど田舎に帰省していた)帰省中に練習するって約束していたけど、1回も練習しなかったよね。帰る前に約束したのに、云々」
と説教していました。

 

その際に、初めて、9 月にこの練習した曲で発表会があることを伝えられて、適当なままではいられないことも、初めて把握しました。。

 

娘も私も、まず何から手をつけたら良いかわからず、
嗚咽と沈黙が交差する中、
妻が現れて、私と娘に聞き取り調査を行い、
「泣いても宿題は終わらないでしょ。練習するよ」
と言って娘を連れて行きました。
その後、2 時間くらい懇々と練習して、
最終的に、度々間違えはするものの、それでも最初から最後まで完走できるようになり、その日の練習は終わりました。

 

 

締め切り日 当日の朝 [13:30:00]

朝、妻は娘と 2 点約束してから、家を出ました。(私はリモートワークですが、妻はリモートワークできない職種のため、ずっと出勤しています。)

  • 昼と夕方に1回ずつ、吹いている様子を iPhone で撮影して(妻に)送ること
  • 19:00 以降(締め切り1時間前)は、何度か撮影しながら練習すること。最終的に、一番いいのを提出すること

 

締め切り日 当日の朝以降 [13:29:59〜]

妻の話を受け、自分なりに工夫して(仕事の合間に)サポートしました。

  • あさイチで、現時点の演奏を撮影する
  • 午前中、自分のペースで練習してもらって、12:30-13:00 に演奏を撮影する
    • 午前中のテーマは、ゆっくりでいいから、最後まで吹き切ること
    • あさイチの動画と比較して、よくなった点を褒めること
      さらに、午後練習する際に、1 点だけ特に注意するポイントを相談して決めること
  • 午後も、自分のペースで練習してもらって、と 18:00-18:30 に演奏を撮影する
    • 午後のテーマは、できるだけ先生のお手本動画のペースに合わせて、吹き切ること
    • 昼の動画と比較して、よくなった点を褒めること
      さらに、最後の 1 時間の練習の際に、1点だけ特に注意するポイントを相談して決めること
  • 最後の1時間(19:00-20:00)は、15 分おきくらいに撮り溜めて、提出候補とする
    • 最後なので、余計な口を出さないこと
    • 19:50 過ぎたら、練習はやめる。
      どれを提出するか1本選んで、提出すること

19:40 頃、仕事を早めに切り上げて早めに帰宅した妻にバトンタッチして、何とか満足のいく練習演奏を録画できたので、3人皆疲労困憊の末、提出できました。

 

 

あの24時間を振り返って、感じたこと

 

あわてない、あわてない

8月24日(木) 夜に、混乱の野に降り立った妻は、
まず、今回のリコーダー提出課題に関して、その具体的な内容を一つ一つ聞き取りました。

 

その結果、以下の事実が判明しました。

  • 先生のお手本演奏の動画が、タブレットに届いていた
    → 誰かに聞いたり、ググったりしなくても、お手本あるじゃん
  • 先生のお手本演奏のリズム・ペースに合わせて練習するように
    → 成果物の仕様が決まっているじゃん

今回課題に対して、音楽の先生はどう説明していたか、
課題一覧を記したプリント 1 枚以外に何か貰ったものはないか、
まず、その確認から始めるべきでした。

そもそも締め切り直前にやることではないことなのですが、
"input" と "output" を正確に把握していないことに気づかず、
私は慌てたまま、思いつくままに対応に追われてしまっていました。

 

謎解きはリリースのあとで

8月24日(木) 夜の私は、感情的になっている娘を前にして、
まず、なぜこのような状況になっているのかを自覚してもらって、
その上で、猛練習するしかないことを理解してもらうために、
また、必要以上に思い悩むことをやめてもらうために、
そのために、言い聞かせていたつもりでした。

しかし、現実は、ただ自分に責任がないことを主張すべく、叱りつけていただけでした。

 

それは、まるで、障害発生を受けて、ポストモーテムを始めたことに等しいのかもしれません。

仕事に置き換えると、「そんなバカな」と一笑できるのですが、当時の私は、自分のやっていることのおかしさに全く気づけませんでした。

 

アジャイル、おまえだったのか

提出期限同日、妻の指示を元に、私がやったことをあらためて眺めてみると、既視感があるようなないような、、、

 

そもそも締め切り直前にやることではないのですが、いずれにせよ、まずは、input と output がそれぞれ何であるか、どう定義(説明)されているのか、そこを把握するとこから始めるべきだったと反省しました。

input にずれが生じると、期待されているものから output は容易にずれていきます。私は、「顧客が本当に必要だったもの」の一枚絵を思い出しました。

 

これが「顧客が本当に必要だったもの」の基本イラストだ!

(画像引用:「顧客が本当に必要だった物」のジオラマを作る :: デイリーポータルZより)

 

 

また、当日のスケジュールにタイトルつけると、以下のように整理できるかもしれません。

  • [Sprint2][成果物の定義] 午後も、自分のペースで練習してもらって、18:00-18:30 に演奏を撮影する
    • [スプリントゴールの定義] 午後のテーマは、できるだけ先生のお手本動画のペースに合わせて、吹き切ること
    • [レトロ][リファインメント] 昼の動画と比較して、よくなった点を褒める。さらに、最後の 1 時間の練習の際に、1 点だけ特に注意するポイントを相談して決める

 

 

あるいは、超短期決戦だったけど、まさに Minimum Viable Product と言えるかもしれません。(無論、アジャイル開発とMVP開発は異なるものなのですが、相性が良い関係性なので、この流れで一緒に話してしまいました。)

 

Making-sense-of-MVP

(画像引用:Making sense of MVP (Minimum Viable Product) - and why I prefer Earliest Testable/Usable/Lovable - Crisp's Blogより)

 

 

 

アジャイルフレームワークの一つなので、ソフトウェア開発手法に限定されたものではなく、実は日常的に、無意識にやっていたことだったかもしれない、改めてそう感じました。

 

なお、この夏休み課題を提出した後、妻は Amazon でリコーダーを購入しており、毎日1回、発表会の日まで、娘と練習しています。(ペアプロ、、、)

 

 

「アップロード時刻」と「翻訳完了時刻」の間

  • 最後の1時間(19:00-20:00)は、15分おきくらいに撮り溜めて、提出候補とする
    • 最後なので、余計な口を出さない
    • 19:50 過ぎたら、練習はやめて、どれを提出するか1本選んで、提出する

 

親も子も「より良いものを!」と思いはヒトツだったのでで、ギリギリまで頑張って、19:56 にアップロード開始したのですが、結果は以下の通りです。

 

アップロード後の表示(イメージ画像)

 

家族3人で阿鼻叫喚したのは、自分以外の2人がコロナと診断された時以来だったかと記憶しています。

 

(この結末は予想しておらず、監視していたわけでもないので、過分に憶測が混じっていると思いますが、その点はご了承ください。)
自分の記憶では、
19:56 に動画をアップロード開始して、
アップロード?のプログレスバーが 19:59 前後に終わって、
「ギリ間に合った。」
と安心したのですが、
その後、サーバ上の所定の場所に移動している?、と推測できる感じ?のメッセージがあったような無かったような、そんなこんなで、最終的に、アップロード画面が更新されて、画面上に表示されたものは、20:02 でした。

 

推測にはなりますが、業者も学校に対して、先生も生徒に対して
「アップロードに時間がかかることが予想されるので、十分時間に余裕を持って早めに提出(ファイルをアップロード)してください。」
と、事前に、繰り返し、説明していると思われます。

また、そもそも、このサービスのマニュアルに書いてあるかもしれないし、このサービスの使い方を最初に先生が説明した折に、この辺りも何度も注意していただろうな、と思います。(高い確率で、娘は忘れているだろうが。)

そして、仕様としても、アップロード開始時刻やアップロード完了時刻ではなく、(アップロード後に後処理を行った後に)「(後)処理完了後の時刻」を記録して表示する(つまり、「締切日時」と比較することになる)としても、それは妥当な話だと私も思います。

 

一方で、保護者としての私は、
「アップロード日時(開始でも完了でもどちらでも構わないから)も表示してください!」
と強く要望したいです。

弊社のAI自動翻訳サービス「Mirai Translator ®」の機能「ファイル翻訳」の UI を見慣れているので、余計に強く感じるのかもしれません。

Mirai Translator ® ファイル翻訳画面

ただ、冷静に考えてみると。

仮に、自分がこのサービス(アプリケーション)の開発チームにいたとして、
「このタイムスタンプ、アップロード完了時刻の方がいいのでは?」
と指摘できるかというと、そもそも思いつかない可能性が高いです。
思いついたとしても、こちらの仕様を強く主張するかと言われると、主張はしていないです。

また、システム内には多数の「XXXX時刻」が存在しているので、画面表示であれ、ログであれ、誰のために、何のために、どの時刻を表示(出力)するのか、判断が難しい問題だなぁと、改めて感じました。

 

今回、「ユーザ目線を想像する」と言う枠から一歩前に踏み出して、実際に自分が使ってみて、初めて感じることができた観点でした。

 

 

we の視点で、why から始める

今回挙げた会議本を読んだ後から、すごく何かが気になっているのに、言葉が出てこない、そんな不安感を覚えました。そのため、同書についてのブログや書評など調べていたのですが、下記の記事に、自分が気になったことが象徴されていたので、紹介します。

 

https://teruyastar.hatenablog.com/entry/20090918/1253267807より引用

「なぜ」は、やる気と成長を止める質問 (All About) | エキサイトニュース
http://www.excite.co.jp/News/column/20090917/Allabout_20090917_2.html

そのため、「なぜ」と問いかけられると、相手は「申し訳ございません。私の不注意で」「がんばってみたのですが」と反省モードに入ったり、>「他に優先することがあって」「不況のせいでどこも話さえも聞いてくれなくて」と言い訳モードに入ってしまいます。

上司であるあなたが欲しいのは、反省でも言い訳でもなく、問題究明や未来に向けての一手です。しかし、相手の理由をすぐに知りた>いがために、「なぜ」という言葉を使ってしまいます。あなたの意図がどうであれ、往々にして「なぜ」は相手を萎縮させ、やる気を奪>う関わりになりかねません。

 

 :

 

逆に「なぜ」を効果的に使う時は
「なぜ私たちは大事な宿題をやらなかったのだろう?」
「なぜ私たちの部署は部屋の片付けができないのだろう?」
「なぜ私たちの会社は成績が上がらないのだろう?」

つまり責任の所在を「you」ではなく「we」の視点で見る。

「なぜおまえは、、、」じゃなく
「なぜわたしたちは、、」です。

 

8月24日(木) 夜に、今陥っているこの状況について振り返った時、自分は「なぜ、あなたは」という視点から見ているだけでした。

  • なぜ、あなたは、(学校で練習しているのに)リコーダーがほとんど吹けないの?
  • なぜ、あなたは、(帰省前に約束したのに)リコーダーを一度も練習しなかったの?
  • なぜ、あなたは、こうなることが予想できなかったの?因果応報って言葉を知らないの?

改めて外から自分の行為を振り返ると、突き放している目線であり、自分だけ安全圏にいるかのような、第三者委員会?的というか、ずるい視線だなぁと感じました。

 

そこで、改めて、今度は「なぜ、私たちは」という観点で考えてみると、あの時には出てこなかった言葉がボロボロ出てきます。
少なくとも、一方的に何かを言い放つ気分にはならないわな、と感じました。

  • なぜ、私たちは、帰省中に一度も練習しなかった / させなかったのか
  • なぜ、私たちは、締め切り前日まで、宿題がどういう状況か確認しなかったのか
  • なぜ、私たちは、締め切り前日まで、全く手付かずだったのか

 

落穂拾い

リコーダー以外にもいろいろ親子での戦いがあり、ようやく新学期も始まったので、
今週末はポストモーテム?レトロ?を行いたいと考えています。

ただ、航空機や鉄道の事故調査委員会のように、正しく運用されてこその反省会であり、小学校の学級会のように個人を糾弾するような運用だと、ダークサイドの効果に陥ってしまいます。

今度は失敗したくないと思い、いろいろ調べ、考えています。

そんな中、日立では製品事故に関する反省会を「落穂拾い」と名付けて、1950年代から継続して実施していることを初めて知りました。

 

www.hitachi.co.jp

www.hitachi-systems.com

www.hitachihyoron.com

 

ふと、ミレーの絵画「落穂拾い」について調べてみました。

ja.wikipedia.org

 

上記 WIkipedia より引用

刈り入れが終わった後の畑に残った麦の穂を拾い集める3人の貧しい農婦が描かれており、二人は正面を向いて腰をかがめ落ち穂を拾い、一人は背中を向け、手には落ち穂をもち、やや腰を曲げて立っている。背景には穀物がうず高く積まれ、豊かな地主が馬に乗って監督するもとでのにぎやかな収穫風景と対比して描いている。労働の重苦しさを描きながらも、明るい朝の太陽に照らされた美しい色彩が壮麗に描写されており、

当時、『旧約聖書』の「レビ記」に定められた律法[3]に従い、麦の落穂拾いは、農村社会において自らの労働で十分な収穫を得ることのできない寡婦や貧農などが命をつなぐための権利として認められた慣行で、畑の持ち主が落穂を残さず回収することは戒められていた。

 

初めて、ミレーの「落穂拾い」を、細部に渡りじっくり見ました。そして、これまでずっと、3人の農婦の姿しか見えていなかったことに、初めて気づきました。

ポストモーテムやレトロを「落穂拾い」になぞらえるなら、あの夏の夜、自分はミレーの絵画の中の地主の気分になっていたのかもしれません。自分も隣に立って、一緒に、ひとつひとつ落穂を拾うことを、まずは意識しようと、そう思いました。

 

落穂拾いする家族

 

Appendix

最新の状況について

この記事を書いて、部内の勉強会で発表したのは 8/31 でした。今回、技術ブログに掲載するにあたり、一部加筆していますが、現在、9/14 です。

 

音楽の最終授業で口頭で説明されていたらしいのですが、実は、授業では練習曲の半分くらいしか練習しておらず、夏休み課題も、その練習したところまで(だいたい40秒くらいの演奏)で良かったらしいです。

新学期始まってから数日経ち、「『よく頑張ったね』と褒められた」と勇ましく報告してきたのですが、なんだか釈然としません。

 

そして、優先度が高いタスク(障害報告含む)が娘から供給され続けていることもあり、ポストモーテムはまだ実施できていません。

 

 

あれから1年

前回、自分が投稿したのは 1 年以上前で、その時は JaSST'22 Tokyo の話をさせていただきました。

miraitranslate-tech.hatenablog.jp

 

その時、グラレコを知り、
「グラレコは自分にはハードルが高すぎるから、まずはヒトを描けるようになりたいな」
と思って、行き着いたのが、イラストプレゼン研究所のサイトでした。

 

siri-illust.com

 

あれから 1 年経ちましたが。

1 年前の実力

現在の実力

娘に勉強教えている際に、気を引くためにちょっと描いたりする程度ですが、
「ちょっと描いてみるか」
と思えるようになりました。

自分の感じていることや考えていることを表現する手段が一つ増えて、少しだけ世界と自分の関わり方が変わったかなと思います。

 

 

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